著者:GATER KAZUKI
みなさん、こんにちは。GATER KAZUKIです。
今日は少し頭にきていることを書きます。
「GT-Rって街乗りには向かないんでしょ?」
この一言を、私はこれまで何度聞いてきたかわかりません。GT-Rに乗ったこともない人が、なんとなく言う。チューニング雑誌を斜め読みした人が、わかった顔で言う。
はっきり言います。それは間違いです。
そもそもR32は何のために作られたのか
901活動という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
1980年代、日産社内で始まった技術革新プロジェクトです。目標はひとつ。「1990年代に、ハンドリングで世界一のクルマを作る」。
注意してほしいのは、この目標が「サーキットで世界一」ではないことです。「ハンドリングで世界一」です。日常域も含めた、走りの総合力で世界のトップに立つ。それがR32 GT-Rの開発思想の出発点でした。
開発主管の伊藤修令氏が掲げたもうひとつの目標が、「ニュルブルクリンクを8分台で走れること」です。ニュルブルクリンクは全長20.8kmの公道サーキットです。タイムアタック専用コースではなく、起伏があり、天候が変わり、様々な路面状況が混在する。そのコースで速く走れるということは、公道でも速く走れるということと、ほぼ同義です。
サーキット専用のクルマを作ろうとしたエンジニアが、なぜニュルを基準にするのか。そこに答えがあります。
チューニング文化が作った「誤解」
「GT-Rは街乗りに向かない」という印象がどこから来たのか、考えてみてください。
答えはほぼ確実に、チューニングされたGT-Rを見た経験からです。車高を落として、サスペンションを固めて、タイヤを引っ張って。そういうGT-Rは確かに街乗りがつらい。段差のたびに底を擦り、乗り心地は最悪で、低速域では神経を使う。
でもそれは、チューニングの結果であってGT-Rの本質ではありません。
ノーマルのR32 GT-Rは違います。純正サスペンションのストロークは十分にあり、ATTESAのトルク配分は街中の低速コーナーでも自然に機能する。スーパーHICASは高速域でのレーンチェンジを安定させる。これらのシステムは、日常域での扱いやすさを前提に設計されています。
「GT-Rは扱いにくい」という人の多くは、誰かがいじったGT-Rに乗ったか、乗ったこともないのに語っています。
280馬力は「暴力」ではない
もうひとつの誤解が、パワーに関するものです。
280馬力というと、「扱いきれない」という声が出てきます。現代の基準では、決して飛び抜けた数字ではありません。でも1989年当時としては相当な出力です。
ただ、ATTESAというシステムの存在を忘れてはいけない。電子制御トルクスプリット4WDは、街中の日常域では基本的にFR的な挙動を見せながら、滑りそうになった瞬間に前輪にトルクを配分します。このシステムのおかげで、ドライバーは280馬力を「制御されたかたちで」使えます。
「パワーがあるから難しい」ではなく、「パワーをうまく使わせる仕組みがある」。それがR32 GT-Rの設計思想です。
「走りのクルマ」と「街乗りに向かないクルマ」は別物だ
ここで整理したいのですが、「走りを追求したクルマ」と「街乗りに向かないクルマ」は、イコールではありません。
ポルシェ911は走りを追求していますが、日常的に使われているクルマです。R32 GT-Rも同じ文脈にあります。速く走れる能力と、街で普通に使える実用性は、両立できる。R32はそれを証明するために作られたクルマです。
「走りのクルマは街乗りに向かない」という発想自体が、1980年代以前の古い固定観念です。901活動はその固定観念を壊すために始まりました。
最後に
R32 GT-Rを「サーキット専用」と思っている人に、一度ノーマルで街を走ってほしい。
段差を越えるときの突っ張りのなさ、低速でのATTESAの自然なフィール、クラッチのつながりやすさ。30年以上前のクルマなのに、街中でも驚くほど普通に走れる。それは偶然じゃない。そういうクルマとして設計されたからです。
「GT-Rは街乗りに向かない」——その言葉を次に聞いたとき、ぜひこの記事を思い出してください。
以上、GATER KAZUKIでした。
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