著者:GATER KAZUKI
みなさん、こんにちは。GATER KAZUKIです。
今日は人の話をします。
R35 GT-Rが2025年8月、ついに生産終了を迎えました。18年間。現代の自動車産業でこれほど長く売り続けられたスポーツカーは、ほとんど存在しません。
そのR35を最後まで守り続けた男の名前が、田村宏志さんです。
GT-Rを作った男ではなく、守った男
田村さんは、R35 GT-Rの生みの親ではありません。それは水野和敏さんの仕事でした。
田村さんが引き継いだのは、すでに神格化されたマシンでした。ニュルブルクリンクのラップタイム、スーパーカーキラーの称号、「ゴジラ」というあだ名——すべてが頂点に達したところで、バトンを渡されたのです。
これは残酷なポジションです。下手に触れば「名車を改悪した」と叩かれる。何もしなければ「進化がない」と言われる。乗り心地をよくすれば「日和った」と言われ、さらに速くすれば「扱えない」と言われる。どこをどう動いても批判が飛んでくる。
田村さんは、そのポジションを逃げませんでした。
ハコスカに憧れた少年が日産に入った
田村さんは1984年に日産自動車へ入社します。入社した理由のひとつが「いつかGT-Rを造りたい」という思いだったと言います。ハコスカGT-Rのレースを見て育った世代です。
ただ、最初の配属は機関材料実験課でした。クルマを造る仕事ではない。
それでも彼は諦めませんでした。入社から2年後、社内公募制度を使って当時設立されたばかりのオーテックジャパンへ異動します。そこで待っていたのが、オーテック・ザガート・ステルビオをはじめとする特装車の開発でした。規格外の仕事を通じて、先輩たちに徹底的に鍛え上げられた。
「クルマには性格がある」——この感覚を、彼はオーテック時代に叩き込まれたのだと思います。
「GT」と「R」のバランスという難題
2013年、田村さんはR35 GT-RのCPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)に就任します。
彼が取り組んだのは、GT-Rをさらに速くすることではありませんでした。「GT(グランドツーリング)」と「R(レーシング)」のバランスを取り戻すことでした。
田村さんはこう語っています。「GT-Rはサーキットでの速さを持ちながら、同時に良質なグランドツーリングカーでなければならない」と。2014年モデル以降、サスペンション、スプリング、ダンパー、ブッシュ、タイヤにいたるまで、あらゆるセッティングを見直していきます。
馬力を増やすような、わかりやすい変更ではありません。地味です。でも、これが本当に難しい仕事でした。速さという牙は残しながら、日常で疲弊しない車に仕上げていく。そのさじ加減を毎年積み上げていった。
田村さんはGT-Rをこう表現しています。「モビルスーツ」だと。ドライバーがその強大な力をコントロールするために着込む装甲——そういう機械だと。速さとは、ただの直線番長ではない。人間の能力を限界まで増幅させる仕組みそのものだ、と。
18年間アイドリングし続けた怪物
R35は2007年から2025年まで、フルモデルチェンジなしで売り続けられました。
毎年改良して、毎年熟成させて、毎年進化させた。新型車は「新しさ」で勝負できますが、古いクルマは「実力と尊厳」だけで勝負するしかありません。田村さんはその戦いを18年間続けました。
2025年、R35が生産終了を迎えたとき、多くの人が「一台のクルマ」ではなく「ひとつの時代」を見送りました。日本のエンジニアリングが欧州のスーパーカーと真っ向から戦えた時代。ポルシェやフェラーリに冷や汗をかかせた時代。
田村さんはその時代の最後まで、火を守り続けた人でした。
そして田村さんは、ホイールを作った
R35生産終了後、田村さんは株式会社トレンドメーカーを設立し、R32 GT-R用の18インチ鍛造ホイール「GT-R Homage(オマージュ)」を世に出しました。
これが、只者ではないプロダクトです。
RAYS製の鍛造1ピース。18×9J、インセット+18。純正デザインをオマージュしたスポーク形状と、当時のガンメタリックの質感を再現しながら、内径の設計によってR35 GT-Rのフロントブレーキ(φ390mm)の装着を可能にしています。
1989年のシャシーに、R35の制動力を。
これは田村さんにしか作れないコンセプトです。R35の開発に長年携わり、R32の歴史も熟知している人物が設計した、第2世代GT-Rのためのホイール。「純正ルックを守りながら、走りの性能を妥協しない」——これはまさに、田村さんがR35でやり続けたことと同じ思想です。
価格は4本セットで¥528,000(税込)。センターキャップは別途必要です。
→ GT-R Homage 18インチ鍛造ホイール(tm-wheel.com)
なお、GT-Rotaku.comでも純正デザインを再現した18インチホイールを取り扱っています。鋳造製、センターキャップ込み、¥277,200(税込)。「純正の雰囲気は絶対に崩したくない」「まず足元をきちんとしたい」という方に見てほしい一本です。
最後に
田村宏志さんの人生を振り返ると、ひとつのことが見えてきます。
材料実験課に配属されても諦めなかった。神格化されたマシンを引き継いでも逃げなかった。批判されても、自分が正しいと信じた方向に進み続けた。
R35は終わりました。でも田村さんはまだ、GT-Rに関わり続けています。ホイールというかたちで、R32オーナーに向けて何かを届けようとしています。
GT-Rは、まだアイドリングを止めていない。
以上、GATER KAZUKIでした。
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