著者:GATER KAZUKI
みなさん、こんにちは。GATER KAZUKIです。
R32がグループAで29連勝した話は、GT-Rオタクであれば当然知っていると思います。でも「グループAが終わった後、GT-Rはどうなったのか」という話を、ちゃんと語れる人はそれほど多くないんじゃないかと思っています。
今日はその話をします。
グループAの終わりと、GT1という新しい舞台
R32がグループA選手権を完全制圧したことで、逆説的に問題が生じました。GT-Rが強すぎて、グループAというカテゴリーそのものが成立しなくなったんです。
1993年をもってJTCC(全日本ツーリングカー選手権)のグループA規定が終了し、1994年からJGTCC(全日本グランドツーリングカー選手権)という新しいカテゴリーが始まります。このJGTCCというのが、なかなか混沌としたカテゴリーで、スープラやフェラーリF40 LM、ポルシェ962C、果てはランボルギーニ・カウンタック(しかも日本ランボルギーニオーナーズクラブがKEN WOLFという名義で走らせていた)まで同じレースに出ていた。なんというか、時代の混乱期らしいカオスなグリッドです。
このJGTCCのGT1クラスに、NISMOのバックアップを受けた3台のスカイラインが参戦しています。カルソニック、ZEXEL、そしてMasahiro Hasemi──「Mr.スカイライン」こと長谷見昌弘氏のチームです。
長谷見昌弘という人物が作った、異端のGT-R

カルソニックとZEXELの2台はグループAのドナーシャシーを改造したものでしたが、長谷見氏のチームはまったく違うアプローチをとりました。
GT-RをRWD(後輪駆動)に変えた。
グループAのR32はアテーサE-TSによる4WDで、それがあの圧倒的な戦闘力の源でした。それをあえて後輪駆動に切り替えるというのは、普通に考えれば退化です。でも長谷見氏の判断は違った。4WDシステムを取り除いたことでRB26を車体後方に搭載できるようになり、重量配分が劇的に改善された。さらにフルカーボンのワイドボディを新規製作しています。
グループAの文法を捨てて、GT1という新しいルールに最適化した新しいGT-Rを作った、ということです。
この車が「UNISIA JECS スカイラインGT-R GT1」です。
ちなみにこのRWD化、私の立場から言わせてもらうと「やっぱりGT-Rは後輪駆動の方が面白いんじゃないか」という気持ちになる話でもあります。長谷見氏がレースの現場でその判断をしたという事実は、素直に興味深い。
30年越しに動き出した個体
この車が最後にレースに出たのは1995年のJGTCC開幕戦、鈴鹿でのことです。そのレースでポールポジションを獲得しています。ライバルは4WDの別チームのスカイライン勢、フェラーリF40、ポルシェ993 GT2など。そのグリッドでポールを獲った後、タイヤ摩耗のマネジメントに苦しんで4位でフィニッシュ。それが最後のレースでした。
その後30年間眠っていたこの個体が最近、イギリス・リンカンシャーのブライトンパークというサーキットでシェイクダウンを行いました。オーナーが「Group A Fabrication」というショップで丁寧にレストアを行い、走れる状態に戻したわけです。
搭載されているのはオリジナルのRB26エンジン。変速機はオリジナルの6速XTracシーケンシャルギアボックス。ホイールはオリジナルのSSRマグネシウム製。30年前のレースの傷跡をそのまま残した状態で、サーキットに戻ってきた。
現在の出力は500ps超。当時のグループA規定では31mmのリストリクターが義務付けられていたため約450psだったものが、現在はリストリクターなしで走っています。今後はオリジナルエンジンを保護するために新しいグループAエンジンを搭載し、600ps超を目指す計画があるとのことです。車重は1,200kg。
この車が持っている意味
私がこの車について書きたかった理由は、「GT-Rの進化の系譜」という文脈です。
R32がグループAを制圧した後、その技術と経験は単純に次世代へ引き継がれたわけではありませんでした。長谷見氏のGT1マシンはRWD化という大胆な変更を加えながら、GT-Rという車が持つポテンシャルをGT1のレギュレーションの中で再解釈した。そしてそこで得られた知見が、1995年のル・マンに挑んだR33 LMの開発にフィードバックされています。
グループAで勝ったR32が、GT1を経て、ル・マンへ向かう。この流れを知ると、R32という車の話がグループAの29連勝で終わっていないことがわかります。
あのポールポジションの後、30年間眠っていたGT-Rが再びサーキットを走っている。そのRB26の音が再びブライトンパークに響いたという事実が、単純に嬉しいです。
GT-Rの物語は、まだ続いています。
以上、GATER KAZUKIでした。
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