GT-Rotaku.com 編集部
2026年4月14日、横浜の日産本社グローバルギャラリーで開催された長期ビジョン発表会。その後のラウンドテーブルにおいて、イヴァン・エスピノーサCEOは記者の質問に対し、こう明言しました。
「スポーツカーには投資をする。GT-Rは出す」
続けて「GT-Rの伝統とヘリテージを持続させる義務があると思っている。それまで、新型スカイラインで楽しんでください。とても楽しいクルマになっている」とも語っています。
今回の発言が持つ意味と、その背景にある課題を整理します。
CEOによる「明言」の重さ
R35型GT-Rの生産は2025年8月26日に終了しています。栃木工場から最後の1台、ミッドナイトパープルの特別仕様車がラインオフし、2007年から18年間・約4万8,000台の歴史に幕が下りました。
生産終了の時点で、エスピノーサCEOはすでに「現時点で正確な計画は確定していないが、GT-Rは進化し、再び登場する」とコメントしていました。その意味では、GT-R復活への意思表示自体は今回が初めてではありません。
ただし今回の発言には、明確な違いがあります。長期ビジョン発表会という正式な場において、CEOが「出す」と言い切った。「伝統とヘリテージを持続させる義務がある」という言葉を選んでいる点も注目に値します。義務という表現は、組織としての責任とプレッシャーを自ら引き受けたことを意味します。経営トップによる正式な言質として、その重さは生産終了時の発言とは異なります。
経営再建との両立という構造的課題
一方で、この発言を額面通りに受け取るには、現状の経営文脈を踏まえる必要があります。
日産は現在、経営再建計画「Re:Nissan」の最終年にあります。グローバルでのモデル数を56から45へと絞り込む方針が同時に発表されており、11車種の削減を進めながら新規の高性能スポーツカーを開発するという、構造的な矛盾が存在します。
GT-Rというモデルは歴史的に、その時代における日産の技術的到達点を体現する存在として開発されてきました。R32型がその典型であり、RB26DETT、アテーサE-TS、マルチリンクサスペンションといった要素技術の結集として登場しました。そうした車を生み出すためには、開発リソースと組織力の裏付けが不可欠です。
複数の媒体が「早ければ2027年にワールドプレミア」という情報を伝えていますが、その2027年は新型スカイラインの発売時期とも重なります。一方でGT-Rの登場はスカイラインよりさらに後になることが示唆されており、時期の見通しは依然として不透明です。
「伝統の継承」を担う人材という問題
発言の中で強調された「伝統とヘリテージの継承」という観点から、もうひとつ重要な論点があります。設計を誰が担うのか、という問題です。
R32の開発を率いた伊藤修令氏をはじめとするエンジニアたちはすでに現役を退いています。R35の開発に携わった技術者についても、経営縮小の過程でどれだけ組織内に残っているかは不明です。伝統とは言葉で引き継がれるものではなく、技術と経験を持つ人材によって継承されるものです。この点については、今回の発表から何も読み取ることができません。
パワートレインについては、複数の媒体がハイブリッド採用の方向で報じています。当初噂されていたEV専用という方針は白紙となり、ハイブリッドへ転換する見方が有力なようです。GT-Rというモデルの性格を考えれば、ハイブリッドという選択は現実的な判断といえますが、これも現時点では公式な確認はとれていません。
GT-Rブランドが持つ固有性という難題
最後に、マーケティングの観点から重要な点を指摘しておきます。
GT-Rのファン層、特にコアなユーザーの間では、「日産というメーカーへの愛着」よりも「GT-Rというブランドへの帰属意識」が強い傾向が見受けられます。断言はできませんが、少なくともそうした声は国内外のコミュニティで広く確認できます。
これは次世代GT-R開発における重要な示唆を含んでいます。仮に「日産のブランド価値回復のための旗艦モデル」という文脈でGT-Rを位置づけた場合、コアなファン層の期待とは乖離する可能性があります。GT-Rのファンが求めているのは、メーカーの看板ではなくGT-Rとしての個性と哲学であるからです。
今回の発表において、エスピノーサCEOの発言にはGT-Rというブランドへの一定の敬意が感じられます。しかし次の発表では、「GT-Rらしさとは何か」を具体的に示す情報──パワートレインの方向性、開発思想、あるいは開発を担うチームの存在──が求められます。
まとめ
次期GT-Rは「R36」と呼ばれ始めており、ハイブリッド採用が濃厚、早ければ2027年にワールドプレミアという情報が出ています。しかしこれらはいずれも公式な発表ではありません。
「GT-Rは出す」という言葉は、現時点でできる最大限の意思表示として評価できます。しかしその言葉の重さを担保するのは、続く発表の中身です。引き続き動向を注視していきます。
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