著者:GATER KAZUKI
みなさん、こんにちは。GATER KAZUKIです。
今回のテーマは「RB26DETTの排気量はなぜ2.6リッターなのか」についてです。
2,568cc。この数字、ずっと気になっていませんでしたか。2.0でも2.5でも3.0でもなく、2.6リッターという絶妙に中途半端な排気量。 しかも正確には2,568ccで、2,600ccにすら届いていない。
これには理由があります。しかも結構面白い理由が。今日はそれを掘り下げます。
そもそもRB26DETTのスペックをおさらい
RB26DETTは直列6気筒DOHCツインターボ、ボア86mm×ストローク73.7mmという組み合わせで、排気量2,568ccを実現しています。
ボアが86mmに対してストロークが73.7mmと短い、いわゆる「ショートストローク型」の設計です。ショートストロークは高回転まで回しやすい反面、低回転域のトルクが出づらい特性があります。実際RB26DETTは低回転ではやや薄いトルク感があって、ツインターボが効き始める3,000rpm以上から急に本領を発揮するエンジンです。このあたりが好き嫌いの分かれるところですが、私は好きです。
話を戻しましょう。なぜ2,568ccなのか。
グループAの「1.7倍ルール」という呪縛
これを理解するには、グループAのレギュレーションを知る必要があります。
FIAのグループA規定では、ターボチャージャーを搭載したエンジンの排気量には「1.7倍の換算係数」が適用されていました。要するに、ターボ車は実排気量に1.7を掛けた数字でクラス分けされるわけです。
当時のFIA資料には、クラス区分の境界線として3,000cc、4,000cc、5,000ccという数字が確認できます。そしてBNR32のホモロゲーション書類に記載された換算排気量は4,367cc。これは4,000ccを超えて、しかし5,000ccには届かない。つまりR32は「4,000cc超・5,000cc以下」のクラスに収まるよう、排気量が逆算されているわけです。
もし実排気量が2,500ccだった場合、換算値は4,250ccでギリギリ同じクラスに入ります。では2,568ccまで排気量を引き上げた意味は何か。クラスの上限である5,000cc換算に相当する実排気量は約2,941cc。その手前まで排気量を使い切ることなく2,568ccで止めているのは、ボアとストロークの組み合わせを高回転型に振った結果として自然に出てきた数字だと解釈しています。「2,568ccにしたかった」のではなく、「設計を詰めたら2,568ccになった」のかと思います。
「なぜ2,500ccにしなかったのか」問題
ここで疑問が生まれます。2,500ccという綺麗な数字にすれば、換算後は4,250cc相当。クラスの境界線ギリギリを攻める戦略もあったはずです。なぜ2,568ccまで排気量を上げたのか。
これは私の推測ですが、「純粋に出力のために排気量が欲しかった」からだと思っています。
グループAのレースでは最終的に600ps以上まで出力を高めることになるわけですが、その前提として排気量は大きければ大きいほど有利です。ベースとなる市販車のエンジンをそのまま使わなければならないグループAでは、排気量はレースカーの性能に直結します。
2,500ccと2,568ccの差は68cc。数字だけ見ると小さいですが、高出力チューニングを施したときに68ccの差は決して小さくない。日産の開発陣がその68ccを選んだのは、「レースで使える余白を1ccでも多く確保したかった」という意志の表れだと思っています。
ボア86mm、ストローク73.7mmという選択
もうひとつ面白いのが、ボアとストロークの組み合わせです。
ボア86mmというのは、RBシリーズの中でも比較的大きい数字です。ボアを大きくすると燃焼室面積が広くなり、高回転時の吸排気効率が上がります。一方でストロークを73.7mmと短くすることで、ピストンの往復距離を抑えて高回転に対応しやすくしています。
このバランスは「サーキットで高回転を維持し続けることを前提にした設計」と言えます。公道でのんびり走ることは最初から眼中になかった、ということです。
実際、RB26DETTを街中でゆっくり走らせると、正直あまりエンジンが気持ちよくないんですよね。低回転域でのトルクが薄くて、信号発進がもっさりする。あれは好意的に解釈すれば「このエンジンは街乗り用じゃない」というメッセージだと思っています。
「2.6リッター」が中途半端に見える理由
最後にもうひとつ。なぜ2,568ccが「中途半端」に見えるのかという話をしておきます。
日本の自動車税制では、排気量によって税額が変わります。2,001ccから2,500ccまでが一区分、2,501ccから3,000ccまでが次の区分です。RB26DETTは2,568ccなので、後者の区分に入ります。
つまり、グループAのレギュレーションを最優先にした結果、税制上は不利な排気量になってしまっている。「レースに最適化したら、税金が高くなった」というわけです。市販車として買うユーザーのことをある程度犠牲にして、レースのために排気量を選んだ。R32 GT-Rはそういう車です。
これを「不親切だ」と思うか、「それでいい」と思うか。
私は「それでいい」と思っています。GT-Rとはそういう車であるべきで、ユーザーの維持費を心配して排気量を決めるような車じゃないと思っています。むしろ「税金が高くなってでもこの排気量にした」という事実の方が、R32の本質を物語っている気がします。
2,568ccという数字の裏側に、グループAへの執念とレースに賭ける姿勢が詰まっている。それが今日話したかった内容です。
ちなみにR33のRB26も基本的に同じ排気量ですが、重さが違うのでまったく別物だと思っています。その話はまた今度にしましょう
以上、GATER KAZUKIでした。
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