著者:GATER KAZUKI
みなさん、こんにちは。GATER KAZUKIです。
今回はデザインの話をします。メカニズムじゃなくてデザインの話をするのは珍しいと思いますが、これは避けて通れないテーマだと考えています。
テーマは「サーフライン」です。
ハコスカとケンメリを象徴するあのボディサイドの彫り、サーフライン。あれがR32から消えています。正確にはR30あたりから怪しくなってきて、R32で完全に別物になった。
なんで消したんですか。
サーフラインが残っていた未来(現在)を考えると、、、今日はその話をします。
サーフラインとは何だったのか
サーフラインとは、スカイラインのボディサイドを前から後ろへ向かって流れるように走る、抑揚のある面の張り出しのことです。ハコスカ(C10型)に初めて採用され、ケンメリ(C110型)でさらに洗練されました。
このラインは単なる飾りではなく、「ここからがスカイラインだ」というアイデンティティの核心でした。横から見たときに、あのラインがあるかどうかで、スカイラインかどうかが一目でわかった。それくらい強いデザイン言語だったわけです。
ケンメリの場合、フロントフェンダーからリアにかけてサーフラインが走り、そこに丸4灯のテールランプが組み合わさることで、あの独特のシルエットが完成していました。「ケンメリのスカイライン」というCMのコピーとともに、あのボディラインは日本人の脳裏に深く刻まれています。
あれが「スカイライン」なんですよね。
R30・R31で何が起きたのか
ケンメリ以降、スカイラインのデザインは世代ごとに迷走し始めます。
R30(1981年〜)では、ボディラインが直線基調に変わりました。「スーパーシルエット」と呼ばれた角張ったフォルムで、サーフラインの面的な抑揚よりも、シャープなキャラクターラインが重視されるようになります。当時のカーデザインのトレンドがウェッジシェイプ(くさび形)に向かっていたこともあり、有機的な曲線よりも直線と角を強調する方向へ舵が切られました。
R30はまだわかります。時代のトレンドとして角張ったデザインに向かっていたのは理解できる。でもあのサーフラインが消えかけた時点で、「あ、なんか違う方向に行き始めたな」という嫌な予感はありました。
R31(1985年〜)になると、さらにその傾向が強まります。ボディは角張りつつも少しずつ丸みを帯び始め、サーフラインの面影はほぼなくなる。この世代でもうほぼ諦めかけていました。
R32でサーフラインが消えた理由
R32(1989年〜)のボディを見てください。丸みを帯びた、空力を意識した滑らかなフォルムです。ハコスカやケンメリのような、あの力強いボディサイドの抑揚は完全に消えています。
なぜ消えたのか。
ひとつは空力性能の要求です。R32はグループAでのレースを最初から念頭に置いた設計で、ボディの空力特性は性能に直結します。サーフラインのような面の出入りは空気の流れを乱す要因になり得るので、滑らかなボディサイドの方が空力的に有利、という理屈です。
もうひとつは時代のデザイントレンドです。1980年代後半は世界的に丸みのある空力ボディが主流になっており、R32のデザインはその文脈の中にあります。
でも、これら聞くたびに思うわけです。アイデンティティを無くしてしまってよかったのか?と。
空力とデザインのアイデンティティは、両立できたはずです。サーフラインを完全に消さなくても、空力を成立させる方法はあったはずです。欧州の同時代の車を見れば、ボディサイドに個性的なキャラクターラインを持ちながら空力性能を確保している例はいくらでもある。「空力のためにサーフラインを消した」は、デザイン力不足を空力のせいにした言い訳に聞こえました。
サーフラインがあったら、どれだけスカイラインっぽかったか
これは完全に私の妄想になります。
R32のもっこりしたブリスターフェンダー、あの四隅を強調したシルエットに、ケンメリ的なサーフラインが加わっていたら。
絶対にもっとスカイラインぽかったと思います。
R32はメカニズムとしては完璧に近い車です。でもデザインとして「スカイラインである」という説得力が、ハコスカやケンメリに比べて圧倒的に薄い。街で見かけたときに「あ、スカイラインだ」とはなるけど、「あ、スカイラインだ……!」という感動がない。あの感動の差は、サーフラインの有無によるところが大きいと思っています。
サーフラインというのは単なるデザインの線じゃなくて、「この車はスカイラインである」という宣言なんですよね。それを消したことで、R32はメカニズムとしては最高でも、スカイラインとしての「顔」を少し失ってしまったと感じています。
ただし、R32のデザインを全否定はしません
一点だけフォローしておきます。
R32のデザインが嫌いかというと、そうではありません。あのもっこりしたブリスターフェンダー、フロントバンパーのエアインテーク、リアのトランクスポイラー。あれはあれで、レーシングカーとしての機能美があります。サーキットで見たときのR32は本当にカッコいい。
でも「スカイラインとしてのデザインの継承」という観点では、明らかに何かが断ち切られた世代だと思っています。サーフラインが消えたのは、その断絶の象徴です。
そして、R33以降は、、、
R32でサーフラインが消え、R33以降はさらにスカイラインのデザインアイデンティティが曖昧になっていきます。大きくなり、重くなり、丸くなり、高級感が増し、気づいたらただの丸っこいスポーツセダンになっていた。
サーフラインどころか、「これはスカイラインである必要があるのか?」という疑問すら湧いてくるデザインになっていくわけですが、その変遷についても今後記事にしたいと思います。
以上、GATER KAZUKIでした。
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