著者:GATER KAZUKI
みなさん、こんにちは。GATER KAZUKIです。
前回のR32誕生秘話の記事で、アテーサE-TSとHICASについて「詳しくは別の記事で」と書いてましたので、今回はその話をちゃんとやります。
最初に立場を明確にしておきます。
私はR32の電子制御が好きではありません。
これを言うと「じゃあR32好きじゃないじゃん」と言われるんですが、それは違います。たぶん、同じように感じている人もいると思いますが、R32という車が好きなのと、R32に載っている電子制御が好きかどうかは、別の話です。
そのあたりを今日はきちんと整理していきます。
まずアテーサE-TSの話から──「邪魔」と「必要悪」の間で
ATTESA E-TS(Advanced Total Traction Engineering System for All – Electronic Torque Split)。通常走行時はほぼ100%後輪駆動で走り、後輪スリップを検知するとフロントへのトルク配分を0〜50%の範囲でリアルタイムに制御するシステムです。
仕組みも採用理由も理解しています。前回の記事で書いた通り、FRの限界をグループAで思い知らされた結果として生まれた、文脈のあるシステムです。
でも、好きじゃないです。
アテーサE-TSが介入する瞬間というのは、本来ドライバーが後輪のスリップを感じ取って、自分でカウンターを当てるなりアクセルをコントロールするなりして対処する場面です。そこに機械が先回りして割り込んでくる。「自分で何か制御しようとした瞬間に、もう終わってる」んです。
体の感覚を鈍らせる、ただそれだけの話です。
車に乗るときに一番大切にしていることは、自分のカラダの感覚と車の挙動が直結している感覚です。後輪がじわっと滑り始めた瞬間を尻で感じて、そこから自分で判断して操作する。その一連の流れが、車を運転することの本質だと思っています。アテーサはその流れを「いや、僕がやっておくよ」と言って横から奪っていく感覚です。
「でもタイム出るじゃん」という声はわかります。そうです、出ます。でも「速く走れること」と「気持ちよく走れること」は必ずしもイコールじゃないので、私の中では「余計なお世話」という結論に落ち着いています。
ただ、ひとつだけ公平なことを言っておきます。
アテーサE-TSがなければ、R32はあのパッケージとして成立しなかった可能性が高いとも感じています。グループAで29連勝という結果も、アテーサE-TSがなければおそらく出なかった。その意味では「必要悪」として存在価値はあると思います。ただ、好きじゃないという気持ちは変わりません。
HICASも、同じくらい好きじゃないです
HICAS(High Capacity Actively Controlled Steering)。後輪を電子制御で操舵するシステムで、低速では逆位相、高速では同位相で後輪を動かすことでコーナリング性能を高める、というものです。
これもアテーサと同じで、仕組みも意図もわかります。でも、好きじゃないです。
本格的に走る人間は、みんな切っていると思います。
サーキットをガチで走っている人間で、HICASをそのまま使っている人をほとんど知りません。HICASキャンセルキットが流通していて、むしろその方がデファクトスタンダードになっている。これが現実です。
なぜ多くの人はキャンセルするのか。自分がステアリングを切っていないのに後ろが動く、しかもその介入タイミングが速度域によって変わる。アテーサと根本的に同じ問題で、機械が勝手に動くことで、自分の体の感覚が信頼できなくなるんです。それが嫌です。
アテーサと違って、HICASは「グループAで勝つために必要だった」という文脈も薄い。正直なところ、「最先端の技術を全部詰め込みたかった」という当時の開発側の気持ちはわかるんですが、現場のドライバーたちがキャンセルキットで黙って対処しているという事実は、そのまま受け止めた方がいいと思いました。
じゃあ全部キャンセルしろって言いたいのか、という話
ここまで読んで「GATERはアテーサもHICASも全部外せと言いたいんだな」と思った方、少し待ってください。
公道を普通に走る分には、どちらも外す必要はないと思っています。
アテーサE-TSは公道での安全性に確実に貢献しています。雨の日でも、ちょっとペースを上げた峠でも、あのシステムが動いていることで救われている場面は間違いなくあります。HICASも、普通に走っている分にはほとんど気になりません。
僕が「邪魔だ」と感じるのは、サーキットで本気で走るときや、車の挙動を限界まで感じながら操りたいときの話です。そういう用途でR32を使う人間にとっては、という話であって、すべてのR32オーナーにキャンセルキットを勧めているわけではないです。
それでも、R32は最高です
最後にこれだけ言わせてください。
アテーサE-TSが好きじゃない。HICASも好きじゃない。でもR32という車は最高です。
RB26DETTのあの音。1,430kgという軽さ。ステアリングのダイレクトな感覚。どれをとっても、他の世代のGT-Rには出せないものがあります。電子制御を差し引いても、この車の基本的なポテンシャルは本物で、だからこそ今でも乗り続けている人たちがいるわけです。
電子制御が好きじゃない人間が、なぜR32に乗り続けるのかと聞かれたら、「それでも余りあるから」と答えます。それくらい、この車の本質的な部分は信頼しています。
以上、GATER KAZUKIでした。
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